災害が発生した際に多くの人は避難所へ避難すると思います。
地震や津波の対策のため、学校やコミュニティセンターのような耐震性がありかつ高いところが指定避難所になっている自治体がほとんどでしょう。
ところで、ご存じでしたか?
被災地では犯罪が発生しやすいという事実を。
プライバシーを守るものがほとんどない、あっても段ボール。
そんな環境において、例えば通帳やお金、スマートフォンなどの貴重品の管理が難しいこと、肌を隠すことができないこと、灯りが少ないこと、避難したものの物資が不足していることなどの背景があり、その背景が犯罪の発生につながるのです。
とくに女性や子どもは犯罪の被害に遭いやすく、ただでさえ被災によるストレスで心身はボロボロ、そこで犯罪に遭遇したら、消えないトラウマに苦しみ続けることになりかねません。
そういった犯罪から被災者を守るために、また正しく自衛するために、どのような対策を取ればいいのでしょうか。
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目次
避難所で犯罪が発生する背景

避難所で犯罪が発生するという状況があまり考えられないのだけれど、どうしてそんなことが起こるのかな?

被災者が犯罪を犯す心理として、不安やストレスが挙げられるそうだよ。状況次第では誰しもが犯罪の加害者・被害者になりうるんだね。
避難所では、警報発令前には避難してきた、という周到な人から、いよいよ家が危険にさらされたために命からがら逃げてきたという人まで様々な人が集まります。
勝手知ったる気心の知れた身内ばかりではありません。
顔も見たことのない、価値観も文化も合わないような他人と小さなスペースを分け合いながら共同生活を送ることになります。
そんな他人同士で、入浴も十分にできない、食事も満足に摂れない、夜も眠れない、これから先いつまで続くか分からない避難所生活をずっと送らなくてはなりません。
また、地震であったら激しい余震活動の持続で命の危険にも晒されます。
当然ながら、それは相当なストレスとなります。
生存手段としてやむを得ず犯す犯罪、ストレスのはけ口として弱者に向けられた暴行、混乱時に発生する火事場泥棒など、さまざまな犯罪が発生する背景が被災地にはあります。
東日本大震災発生以降は、地震や原発事故に影響された、または便乗した犯罪や発生しており、警視庁や国民生活センターでは注意喚起がなされました。

三宅島や雲仙岳の噴火のときには避難指示が出て無人になった住居に忍び込む泥棒がいたんだ。東日本大震災では、被災者間で起きるトラブルだけではなく、ボランティアを装った外部の人間による詐欺行為なども問題になったんだよ。

だから国民生活センターからも注意喚起がなされたのね。

被災者の立場に立ったら、ただでさえ命を繋ぐのに必死なのに、わずかな水や食料、大切なお金などをかすめ取られる。こんなに腹立たしいことはないね。
避難所で発生する犯罪の種類
避難所に限らず被災地全体で発生する犯罪とは、どういったものが多いのでしょうか。
また、被害届が出ておらず泣き寝入りした事例もあるそうです。それはどういった内容だったのでしょうか。
生存手段としてやむを得ず犯す犯罪
避難所生活をしのぐための食料品や日用品が盗まれたというケースが多かったそうです。
SNSで検索した結果、盗難の被害にあったものは主に
- 食料品
- 携帯の充電器
- トイレットペーパー
- 懐中電灯
- 現金
が多かったそうです。
また、燃料不足によるガソリンの窃盗もありました。
避難直後に物資が供給されていない、備蓄していたものが震災により使い物にならなかったり、備蓄が不十分だった、避難所生活が長期化することで備蓄が底を尽くなどの原因で避難所内で窃盗が横行していたそうです。
不安やストレスが原因となって起きる犯罪
熊本地震ではSNSで「性犯罪が多発しているため、女性や子どもはひとりでは行動しないように」という注意ツイートが拡散されました。
夜間トイレに行くために、わずかな灯りを頼りに移動する女性を狙って強姦が多発していました。
また、わいせつ行為としてSNSにあがった被害報告では
- 夜になると男の人が布団に潜り込んでくる
- 授乳や着替えを仕切りにしている段ボールの上からのぞき込んでくる人がいる
- 寝ているときに触られた、襲われた
などの被害報告が挙がっています。
また、被害に遭うのはなにも女性だけではありません。性別問わず子どもも狙われます。
こういった性犯罪に関しては、「命が助かっただけでもありがたいから」と我慢して泣き寝入りするケースが多くみられ、把握されていないことが多いと言われています。
また、性犯罪は避難所のみならず、被災地の住居内や路上でも発生することがあります。
わいせつ行為のみならず、ストレスがピークに達した被災者間のトラブルによる暴行や傷害事件も多発しました。
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避難所外で発生する被災地の犯罪
被災地では混乱に乗じて、警備体制が崩れた隙を狙い「火事場泥棒」が発生します。
また、被災者の不安に付け入ってだまして金品を奪うような詐欺行為も発生することがあります。
混乱時に発生する火事場泥棒
さきほど紹介した、火山噴火による避難中での空き巣や、休業中の金融機関や店舗に侵入し金品を窃盗する「店舗荒らし」などが多発していました。
混乱時には被災地では、命を守ることに必死でお金は二の次になります。そういった隙をついて窃盗のためにわざわざ危険な場所に忍び込む犯罪者がいるのです。
空き巣の他にも
- 被災車両を解体転売目的で窃盗
- ATMの窃盗
- 電柱の変圧器を窃盗
など、通常では考えられないようなものを窃盗するケースが相次ぎました。
海外より転売を目的に来日してくる外国人やボランティアを装ってやってくる犯罪者により引き起こされました。
詐欺
震災後、屋根や電気の不具合がないかを点検するという口実で訪問し、嘘をついて不安をあおり劣悪な商品を購入させたり、不当な契約を交わさせる「点検商法」という悪徳商法が横行しました。

常套句としては、「有効期限が切れており交換しないと危険です」「故障しています」「法律の改定により設置が義務付けられました」などがあるよ。
また、ボランティアや非営利組織と称して街頭が訪問で募金を募る「募金詐欺」、被災者本人や家族を装い「預金通帳が津波でなくなった」と偽って通帳を再発行し、だまし取る事件、仮設住宅の購入を騙る特殊詐欺事件も発生しました。
サイバー犯罪
犯罪は何も現地だけではありません。
慈善事業を行う団体を騙りホームページを作成し、募金を着服する詐欺行為であったり、日本赤十字社を騙り、個人情報を聞き出して悪用するフィッシング詐欺、災害情報を装ったスパムメールなどの存在もあります。

こういったフィッシング詐欺やスパムメールの被害は災害発生の有無に関わらず後を絶たないけれど、災害という特別な状況に陥ったときには通常より引っかかりやすいので要注意だね。
犯罪だけではない?被災者やその周囲を取り囲む問題行為とは
災害の後には、犯罪性はないけれど、混乱を招く問題行為も多発します。
代表的なものは「チェーンメール」です。
例えば、東日本大震災のときには、「西日本で使用する電気を節約して東日本に送電しよう」といったチェーンメールが広がりました。
また、現在ではTwitterやfacebookなどのSNSを利用してデマを流す行為が問題視されています。
こういった類のデマが横行する原因は、被害のなかった都道府県に住む人たちが「そうなんだ、これはみんなに知らせなくては」と善意で拡散することが原因の一つです。
こういったデマの拡散により、重要な情報が見逃されたり、サーバーの混雑により必要な情報が届けられなくなる恐れがあります。
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避難生活において自衛する方法
では、避難生活を送るうえで私たちはどう自衛したらいいのでしょうか。
貴重品は肌身離さず
現金や通帳、携帯電話などの個人情報や貴重なものは、できるだけ肌身離さず行動しましょう。
避難所は段ボールで区切られただけのプライバシーのない空間であり、大切なものが人目にさらされやすい状況にあります。
その場を離れた隙に盗難に遭う可能性がありますので、十分注意しましょう。
ひとりで行動しない
貴重品を肌身離さず行動すると、置き引きの被害はなくなりますが、自身が襲われたときには貴重品どころか自分の命まで危険にさらすことになります。
普段から近所付き合いであったり友達付き合いなどを密にして、できるだけひとりにならないようにしましょう。
特に性犯罪の被害に遭いやすい女性や子どもは固まって行動しましょう。

ご近所付き合いが大切なのは、いざというときに信頼できる顔見知りを作ることで犯罪から身を守るためだよ。ちょっとした挨拶だけでもいいので、できるだけ地域とかかわりを持とう。
信頼できる人間関係を作っておく
先ほどの「ひとりにならない」と同様ですが、自分の不在時に荷物や子どもを守ってくれる人、協力し合える人、情報を共有できる人がいると避難生活のストレスもかなり軽減します。
置き引きの被害も発生しにくくなります。
犯罪に関する情報を共有する
実際に犯罪が発生した場合、すぐに通報し、いつどこでどんなことが起きたかを周囲の人と情報共有することで被害の拡大を防ぐことができます。
性犯罪に関する情報の共有はプライバシーの問題もありむずかしいと思いますが、「過去にこういうことがあった」「こういう状況でこんなことが起きた」などといった過去の災害での情報を共有し、新たな被害を予防しましょう。
大元が不明な情報はすぐ鵜呑みにせず、相談する
不安な状況ではどんな情報が真実か虚偽か分かりません。
家屋の点検・募金など個人や聞いたことのないような団体などが発信源の情報はすぐ鵜呑みにせず、消費者センターや警察に相談したり、信頼できる人に相談したりしましょう。
また、SNS上でも詐欺やスパムに関しては注意喚起がなされている場合があります。「こんな話を聞いたけど、インターネットで調べたら詐欺だった」ということはよくある話ですので、よく調べてみましょう。

勧誘や商品の購入を勧められたりしたら、曖昧な態度を取らずに「結構です」ときっぱり断りましょう。今すぐの購入や契約を迫る行為はだいたい詐欺だと思っておいた方がいいですよ!
善意の「拡散希望」に要注意
被災地に関する情報がSNSやメールで送られてきた場合、デマの可能性を考えて慎重に考え、むやみに拡散しないようにしましょう。
災害が発生した場合の通信は被災地が最優先です。デマの拡散のために必要な情報が得られないことが危険であることを十分に理解しましょう。

善意が無意識の悪意に変わることもあるから、特にインターネットを経由した情報の取り扱いには十分注意しよう!
避難生活でもうまくストレスを発散させる
被災地や避難所で発生する犯罪の多くは、精神的ストレスが原因となっている場合があります。
下手をすれば自分も犯罪者になる可能性があるのです。
避難生活は非常に不安も大きく、ストレスになりますが、上手に睡眠を取ったり、周りの人とコミュニケーションを取ったり、音楽を聴いたり少しでも娯楽に興じたりして少しでもストレスを軽減しましょう。
備蓄を十分にしておく
被災地における窃盗は生きるためにやむを得ない場合が多々あります。かといって決して許されることではありません。
備蓄が不足していると逆に自分が窃盗をしないと命を維持できないという状況も十分あり得ます。
備蓄を十分にしておき、心にゆとりを持ちましょう。

備えあれば憂いなし、だね!
被災地であろうと罪は罰せられなくてはならない
たとえ生きるためにやむを得ず犯した場合でも、罪は罪です。
罪を犯せば、必ず被害者が出ます。災害でストレスを抱えているという状況はみな同じです。
決して対岸の火事ではありません。もしかしたら自分が犯罪者になるかもしれません。
また、被災中に犯罪の被害を受けたことは一生を左右する傷になることもあります。
特に性犯罪を受けた女性や子どもは、今後の人生をトラウマのせいで結婚、妊娠出産などできなくなる恐れもあります。
せっかく助かった命を自ら断ってしまうという悲劇も起きることがあります。
犯罪はすべて自衛できるものではありません。かといって全く防げないことはありません。
できる限りの自衛をして、被害を受けた場合は有事の状況だからといって泣き寝入りせず、警察や国民生活センターに相談・報告をしましょう。
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