10月までは秋と言えますが、11月になるといよいよもって冬のはじまりです。
冬といえば毎年様々な暖房器具が登場し、家の中と外の寒暖差で風邪を引いてしまう方も多い季節。
そんな冬、気を付けたいことは風邪だけではありません、もっともっと気を付けなければならないことがあります。それは火事、火災です。
風邪は余程悪化しない限り1週間もすれば治りますが、もしも火災が発生して家が焼けてしまったら、1週間どころか1か月、1年たっても元通りにはなりません。
住む場所自体は元通りになっても、そこにあったあなたの大切な持ち物や家に刻まれた思い出は永遠に元には戻らないのです。
しかも、火災を起こした場合3割以上の割合で隣の家にも延焼してしまいます。
一応、民法においてはその原因が過失である限り賠償の責任は発生しないことになってはいますが、あなたの無知や不注意で他人の大切なものを奪ってしまったという責任は一生かかっても償いきれません。
なので、絶対に火災は起こさないよう細心の注意が必要なのです。
「冬になるとなんだか消防車のサイレンの音をよく聞く気がする…」「11月に入ると防災、火災防止のポスターをよく見かけるようになった。」と感じている方も多いことでしょう。
その感覚、もちろん「そう感じる」というだけの話ではなく、実際に冬は非常に火災の起こりやすい時期なのです。
そこで本日は、なぜ冬に火災が増えるのか、そしてそれに対して我々はどういった対策を取るべきなのか、ということをメインにお話しさせていただきたいと思います。

どうやっても償えない責任を一生背負ってしまう、本当に怖いね。

本当ね。できるだけのことをして、絶対に火災を起こさないようにしましょう。でも、そのために何をしたらいいの?

いい心構えだね。でも防災の前にまずは原因を知らなきゃ対策もできないよ。だからこれから説明するね。
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目次
冬の火災はなぜ起こる?統計上どれほど起こりやすい?
さて、冬は火災が起こりやすいといいましたね。
では、主に住宅地で火災発生する原因と、統計上の数あるデータから抽出した月別の家屋火災発生数についてお話しします。
火災が冬に起こりやすい2つの理由
火災が冬に発生することの原因として、主に2つの理由があるとされています。
これら2つはさわりだけは知っていてもはっきりとした因果関係を知らない、という方も多いでしょう。
暖房器具が火災の原因となる
冬になれば当然寒さは増します、ですのでほとんどの家庭では暖房器具を使って暖を取ります。しかしながらこの暖房器具が実は冬に火災が増える一番の原因なのです。
詳しい数字は次のコラムで説明しますが、一般に使用される暖房器具の中でも最も危険なものは、想像がつくと思いますが「ストーブ」。
ストーブにも様々な種類がありますが、ここでは大きな分類として「石油ストーブ」「電気ストーブ」に分けて説明します。
「石油ストーブ」は最もポピュラーな種類で、灯油を入れて燃焼させることで熱を起こす、という単純な仕組みの最も古いタイプのストーブです。
石油ストーブの歴史は1892年にまでさかのぼることができ、スウェーデンで発明されました。
そののち1955年に日本に輸入され、一般家庭で利用できる暖房器具ということで一躍人気を博し、現在でも古い住宅やお年寄りの住まいでは主流となっています。
ですがこの石油ストーブ、その単純さゆえに危険度もかなり高くなっています。
特に古いタイプは純粋に高温の熱源により熱を加え続けるという仕組みのため、つけっぱなしで寝てしまったりちょっと目を離したすきに近くに置いていたものがどんどん加熱され、ついには発火温度に達してしまって火元になる、というケースが多いのです。
また、石油ストーブを置いている家は比較的古い家が多い、すなわち、断熱材や防火対策建材の少ない時代に作られた木造住宅が多いこともまた火災発生率の上昇に拍車をかけています。
加えて、皆さんもテレビなどで目にしたことがあると思いますが、古いタイプの石油ストーブには構造上の不具合があるものも時折あり、メーカーより自主回収のCMが打たれることがあります。
しかし、こうしたCMを用いて回収しきれなかった不良品も多く、気を付けて使っていたにも関わらず自然発火してしまう、という悲惨なケースも少ないながら確認されているのです。
続いて「電気ストーブ」は比較的新しいタイプのストーブで、日本で主流になったのは昭和末期ごろからと言われています。
こちらの電気ストーブは先ほど紹介した石油ストーブに比べると比較的安全です。
「コイル」と呼ばれる鉄でできたばねのようなものに電流を流すことで電気を熱に変換する「電熱線」と呼ばれるものが主流なので、「高温の熱源から直接熱を放射する」という仕組みは石油ストーブと変わりません。
しかし、石油ストーブ黎明期に多くの火災の原因となった経験を生かして生産されているので、転倒時やつけっぱなし時に自動的に電源停止するという石油式では難しかった仕組みを導入しているほか、熱源からできるだけ離して人体やそれに近い性質のものを重点的に温める「遠赤外線式」というものがあることも特徴的で、これらにより石油式に比べて格段に安全性は向上しています。
そうはいっても高温の熱源を使用していることに変わりはないので、新聞紙などの可燃物を近くに置きすぎるとやはり発火してしまいますし、初期に開発されたものはやはり安全対策も未熟なものが多く、あくまで「比較的」安全なだけであると認識することが重要です。
また、その他の暖房器具はストーブに比べれば格段に火災発生率は少なくなるのですが、その中で比較的火災発生件数が多いのは「こたつ」です
こたつの仕組み自体は電熱ストーブと似ており、その構造上安全性は高いものの、熱源に可燃物を近づけすぎると発火する場合があります。
これは例えば布類やこたつ布団そのものをこたつの熱源に近づけっぱなしにするというケースです。
発火の可能性自体は低いのですが、もし発火温度に近づいて煙が出始めてもこたつ布団で覆われているため気づかない、ということから時折火災に至っています。
加えて、こたつは暖房器具の中でも特に消費電力が大きいため、延長コードを複数使用する、いわゆる「たこ足配線」を行った際にショートしてしまい、電気火災に至る、というケースも確認されています。
冬の乾燥も実は危険
では「エアコン」なら絶対安全か、というとそうでもないのです。
もちろん、電気配線の不具合などの希なケースがあるため絶対火元にならない、とは言い切れませんが、基本的にエアコン自体から出火することはありません。
エアコンは室外機を用いて空気の入れ替え等を利用することで、「燃焼」というステップを踏まずに気温を上げることができます。
そのため、「燃焼」を用いる石油ストーブと違い、水蒸気が発生しないのです。これの何が問題なのでしょうか?
カギは「乾燥」にあります。
そもそも湿度というのは多少ややこしいもので、気温が上がるほど空気中に含むことのできる水分量が上がるのです。つまり、水蒸気を発生させずに気温だけを上げた場合には相対的に湿度が下がるのです。
ややこしいですよね。
かいつまんでいえば「20度で湿度100%」の状態でクーラーを使って30度にした場合、「30度で湿度100%」とはならず「30度で湿度約55%」となってしまうのです。
つまり割合の問題です。
そして乾燥しているということは火災を引き起こしやすくなるということでもあります。
じめじめした時期には洗濯物は乾きにくく、からっとした日には乾きやすいのと同じ原理で、湿度が高いとあるものが発火点に達しても自然に湿って鎮火してくれますが、乾燥しているとそのまま火事になってしまうのです。
総務省の統計からみる月別の火災発生数
それではここで実際のデータに触れてみましょう。総務省が行った2016年度の統計をもとに、関係のある情報を引用して紹介します。
まず、全国で起こった火災の総数は36831件、うち住宅火災は11354件であり、おおよそ3割が住宅火災でした。
ここから放火など無関係なものを省いて割合を見ていきましょう。
最も多かったのは台所、調理器具からの出火で2087件、およそ20%でした。次いでたばこの不始末が1451件で13%。そして第3位として出てくるのがストーブで、932件、8%となっています。
そこからは火遊び、電気配線の故障などが続き、先ほど紹介したこたつは44件で1%未満となっています。
次に季節別データを見ていきましょう。
こちらは住宅火災ではなく、計20991件の建物火災全体を母数とするデータからの抽出となります。
まず、暖房機器の利用がほぼなく乾燥もしにくい4月~9月の6か月の合計を見ると9515件です。対して、火災の多いと言われる10月~3月の合計を見ると11476件となっており、明らかに建物での火災が起きやすくなっています。
参照元:総務省消防庁

なるほど…ストーブも危ないけど、こたつも決して安全とは言い切れないのね。

そうなんだ、そして、エアコンも火災が起こりやすい環境になってしまうから別の危険があるんだよ。

じゃあ暖房器具は使わない方がいいの?

そんな極端なことじゃないよ。これから説明することに気を配るだけで十分火災は防げるんだ。
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冬の火災を防ぐためにできる2つのこと
ここまで見ていただいて、どうして冬場に火災が多いか、ということがお分かりいただけたと思います。
では「原因」を把握したところでいよいよ「対策」の話に移っていきましょう。
ここからが最も大事な部分です。
夏には起こらないことが起こりうる
さて、先ほど説明した通り、冬場は主に室内が乾燥することが多いので、夏場では火災に至らないようなちょっとした火種が火元になってしまうことが多くあります。
その代表例がたばこの不始末です。
先ほど、たばこの不始末が火災原因の第2位だと言いましたね、その背景には、乾燥を考慮に入れずにたばこの吸い殻を処理していることが大きく絡んでいると考えられています。
例を挙げましょう。
JTの統計によると、たばこの吸い殻を始末する際に一番危険なケースが、煙草を吸い終わった後、火種が完全に消えないうちにビニール袋に入れてしまうといったものです。
これにより、ビニール袋が熱で溶け、その下にある畳やじゅうたんに熱が伝わる結果となります。
湿度が十分な環境ではせいぜい焦げ目がつく程度で済むのですが、乾燥していると発火したり近くの新聞紙などに火種が移ってしまうリスクが跳ね上がるのです。
この他、調理機器による火災をはじめとし、あらゆる火災のリスクが夏場よりも上がるため、より火の始末に気をつかい、特にたばこは水に入れて処理するか、そこまでいかなくても灰皿でもみ消してから十分な時間がたつまでは決して処分を考えない、などといった対処が求められます。
暖房器具はできるだけ新しいものを
次に気を付けたいのが先ほども説明した暖房器具についてです。
石油ストーブよりも電気ストーブ、それもできるだけ最新式の物を選ぶことで火災のリスクを大きく下げることができます。
確かに毎冬発売される最新式の暖房機器は結構お高いものです。
しかしながら、メーカーも「火災を起こしやすい暖房機器である」という悪評を避けるべく、年々様々な安全装置を開発、追加しています。
それに何より、最新式の暖房機器というのは性能も抜群で、電気代の節約という観点から見ても優秀です。
なので、ここまでお話ししてきたように「暖房機器は自分の財産や信用、何より自分の身の安全にかかわるものである。」ということを念頭に置いて、安かろう悪かろうな製品を買うのではなく、十分な信頼のあるメーカーの安全装置の充実した製品を購入することも検討してみてはどうでしょう。

なるほど、日常生活の中でちょっと気を配るだけで火災は防げるのね。

そうなんだよ、そして、ちゃんとした暖房機器を正しく使えば決して危険じゃないんだ。
知ることと注意が一番の対策
結論として言えることは、「確かに冬場は火災の原因となる暖房機器と乾燥の2つの要因がある。
しかしながら、十分な注意と適切な製品利用により十分に火災のリスクを回避することができる。」ということです。
防災において一番大事な事とは「知る」ということです。
知らなければ対策を立てることもできませんし、何より不適切な行動を知らないがためにやってしまう、ということがあるためです。
先ほどのたばこの不始末がいい例ですね。
そして、この記事を読んで皆さんは今「知る」ことをしました。
これによって皆さんが今冬も火災に見舞われることなく過ごせたなら、これほどの喜びはありません。
最後の万が一に備えて消化器は必ず用意し、家族みんなで共有しましょう。
消化器には期限があり、「消火器の期限は何年?古い消火器の処分の仕方や買換えで注意すること」で詳しく解説しておりますので合わせてご覧ください。

「知る」ことから全てが始まるのね。防災対策では特に。

その通りだよ。そして時に「知らない」事は罪にもなるんだ。法律でいう「過失」の一部がこれにあたるんだ。

そうね。それに、罪に問われなくても責任は生じる。火災においては特にそうね。

だからこそ大きな施設なんかだと「火元責任者」が必要になったりするわけだよ。
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