「姿勢を低くしておけ!」「頭が隠れるように机の下に入れ!」、あるいは「事態が治まるまでできるだけ動くな!」などなど、「緊急時のやるべきこと」として要求されている事柄は結構多岐にわたります。

しかし考えてもみてください、こんなに色々な事をニュース速報なりを見るやいなや実行に移せる人間がどれほどいるでしょうか?いや、大抵の場合はパニックに陥る、慌てて飛び出すなどしてしまい、結果的に大けがを負う羽目になってしまいます。

そこでアメリカで考案されたのが「Shake Out training」、日本で言うところの「シェイクアウト訓練」、あるいは「一斉防災訓練」等と呼称される訓練です。

この訓練は学校で行われる避難訓練とは違い、「事前告知がなされている」という大きな特徴があります。

すなわち、突然の地震に備えるのではなく、事前準備の確認、そして事後の反省等も含めてのトレーニングとなっています。

では今回は、そんなシェイクアウト訓練の意義と方法、そしてそれらを踏まえた地震対策の重要性に触れていきたいと思います。

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シェイクアウト訓練の行われる具体的な方法

さて、具体的なシェイクアウト訓練についての話ですが、これは主に市町村が中心となって行われるものです。

各市町村がキャリア、すなわち携帯電話会社を中心とした相手に依頼を出し、その結果として一連の流れが行われるわけです。

まず携帯電話会社と市町村で合意があった場合、市町村、携帯電話会社は「事前告知」として「○月×日にシェイクアウト訓練を行います。シェイクアウト訓練とは~」といった内容の告知を行う、ということになっています。

そして当日、所定の時間に携帯電話から一斉に「緊急避難メール(訓練)」が送られてきます。このメールの内容に記されているのは主に下の3点。

  • あくまでも訓練であるということ
  • 発生した架空の災害(地震、豪雨、水害が多い)についての範囲や規模に関する情報
  • 取るべき行動について

こうした説明がされるために実際の災害と間違えるリスクはかなり低くなっています。

また、発生する災害は実際にその近辺で起こりうる大規模災害が選ばれる傾向が強いため、このこともまた、訓練を実践に生かすための利用法として捉えられるようになっています。

基本の流れはこれだけなのですが、場合によっては事後に社内や町内会などでミーティングを行い、反省点や実際に発生した時に具体的にどう動くか、などの発展的な内容を話し合うことで、さらにその価値を高めています。

参照:東京薬科大学ホームページ

はぴーちゃんはぴーちゃん

そういえば急に携帯電話でこんな内容が送られて来たことがあったわね。思わずビックリしちゃった。

たいさくんたいさくん

まあ、「行うことの周知」が余りできてないのが原因だと言われているよ。

はぴーちゃんはぴーちゃん

どうして?確かに広報誌なんかは読まないけれど、メールで来たら気付くはずよ?

たいさくんたいさくん

そうでもないのさ。これは携帯電話会社からのメールだから専用のフォルダに分類される。結構そこを読まない人は多いみたいなんだよ。

シェイクアウト訓練を行うことの意義と歴史

歴史

ではこのように手間をかけて大規模に行われるシェイクアウト訓練についてですが、次にその歴史を交えて意義について解説していくとしましょう。

多少お堅い内容にはなってしまいますが、防災を行う上で重要な教訓も含まれていますのでお目通しいただけると幸いです。

シェイクアウト訓練の歴史は存外に短く、今からわずか10年ほど前、アメリカの大学で始まったとされています。

その発案者としてクロトア・H・キッシンジャーという教授を挙げることもありましたが、現在では「学校側と学生側が共同で発案した」というのが通説になっています。

地震や水害の比較的少ないとされるアメリカにおいてこうした取り組みが始まったのは驚くべきことといえますが、そのもたらした結果は大きく、数百万人規模で初回の開催が行われたと日本シェイクアウト連盟より発表されています。

日本において最初にこの取り組みが始まったのは2012年。惜しくも3/11大震災には間にあわなかった形になりますが、それでも地震大国である日本においてこの訓練に対する意欲は非常に高く、積極的に参加するのみならず、シェイクアップ訓練をさらに高度な地震発生直後の処理(ex:ガス栓の処理、水源の確保)等に繋げようとする向きがあります。

ですがそこまで敷居を上げてしまうとかえって参加者が減るため、あくまでも必要最低限の動きに留めるべき、との意見もあり、今後の発展が期待されます。

また、日本では自発的に参加表明をした人間だけでも500万人を超え、今なお年間50万人のペースで進行を続けています。その中には医療、介護関連の参加者も多く含まれていることから、包括的に初期災害を防ぐにあたって「緊急地震速報」と双璧をなす形で今後の防災への貢献が期待されています。

次いで、精神衛生に及ぼすメリットもかなりのものではないか、と期待されています。「いざという時」を想定していない層に対して、防災を身近なものに感じさせる足がかりとすることができる、これがひとつ。

そして、災害の恐怖を知っているがゆえに過剰に心配し、そのストレスを受けている人間に対しての「自分は災害時でも適切な行動がとれる」という自信付け。これがひとつ。

最後に、地震の恐怖を適切に受け止めてはいるもののその防災対策を現実に行う場を与えることでさらに「自分は万全である」という達成感を与えられること。これらが防災界隈では提唱されています。

出典元:The Great Japan ShakeOut

はぴーちゃんはぴーちゃん

結構、歴史は短いのね。それにしても2008年に考案されたものがここまでのスピードで定着した、というのは驚きね。

たいさくんたいさくん

うん、初回参加者だけで500万人とも言われているから、驚くべき規模だ。やはり実行の簡単さが第一にあったんじゃないかなあ。

はぴーちゃんはぴーちゃん

なるほどなるほど。ところで文中でも触れられているけれど、地震の少ないアメリカでどうしてそこまでの人数が集まったのかしら?

たいさくんたいさくん

うーん、まだ定説は出ていないけど、各種の考察では「イラク戦争をはじめとした天災、人災の記憶から、「できる対策はしておく」という人間が多かったのでは」と言われているよ。

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シェイクアウトに関する知識を踏まえた上で見る防災対策のあり方について

被災地

さて、ここまででは近年始まったシェイクアウト訓練の概要を説明してきたわけですが、それを含む様々な行為の集大成である「防災対策」についてもシェイクアウト訓練を軸線に考えてみましょう。

そもそも防災対策の意義はどこにあるかといえば、「不意の死、重症を避ける」ことにあるとされています。行動不能な状態に陥ってしまっては自分自身の体のことは勿論、家族や友人の救助といったこともできなくなりますからね。

しかしながら、近年においては防災対策に対する日本人の意識はあまり高くない、と統計されています。

平成生まれであっても地元のそれなりの規模の地震を見てきて、なおかつあの2011/3/11の悲劇においてはリアルタイムで見ていたにもかかわらず、どうしてそれに関する防災対策をしないのでしょうか?

そこには日本人に多く見られる「喉元過ぎれば熱さを忘れる」「あきらめ」に問題があるのではないかと考えられています。

確かにあの大震災はそのあまりにも大きい規模から我々の記憶に大きな瑕を残していきましたし、それを忘れているとはとても言えません。

しかしながら、あの大震災はあまりにも規模が大きすぎ、次にこの大震災が地元で発生した場合、そうそう生き残れない、という「あきらめ」を与える結果となってしまったわけです。

そして、数年に一度発生する自分の地元付近での中規模の地震、これに関しては確かに恐怖ではあるものの、あくまで一過性のものと捉えられる程度の恐怖なのです。

適切な対策をしなくても大概の場合無傷ですんでしまう程度の地震であるからこそ、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という現象を引き起こしてしまっているわけですね。

シェイクアウト訓練においてはこれら二つの問題を解消する要素を兼ね備えている。万全の準備をしなくても生存率が上がるという手段を提示することであきらめを払しょくし、本格的な防災対策を行うことへの第一歩となる。

また、適切な対策をせずとも生き残れる、という人間に対しては、適切な対策とはこれほど簡単、手軽なものである、と伝えることで、過不足ない防災対策というものを遠回しに伝えることができ、これまた防災対策の発展の種となる。

シェイクアウト訓練に限らずとも、防災対策の第一歩は「正しい災害についての知識を身につけること」であるとされており、そして第二歩が「正しい災害対策というものを学ぶこと」とされています。シェイクアウト訓練や緊急地震速報等はこれらに两属しています。

それだけでなく、災害対策について興味がない、時間がないといった方に対しての「入り口」であると同時に、災害を知るにつれて恐怖心ばかりが高まってしまった人を第二歩へと「接続する」役割を担うことができるという点において、今後の発展により期待が持てます。

そうした入り口を通じて正しく防災対策の世界に入り、そして物資、知識を身につけること。それこそが我々非力な人間が天災というものに立ち向かうための心がけであり、意義であり、または理性的な本能であるといえるのではないか、と結論付けます。

出典元:The Great Japan ShakeOut

はぴーちゃんはぴーちゃん

なるほど、過不足のない警戒こそが最も大切、と捉えるべきなのでしょうね。

たいさくんたいさくん

そうだよ。防災対策物資が揃ってさえいればどうとでもなる、というほど単純なものではないからね。揃ってないとほとんどどうにもならないけれど。

はぴーちゃんはぴーちゃん

その点、シェイクアウト訓練による貢献というのは本当に大きいわね。色々な防災対策への「入り口」になれるわけだからね。

たいさくんたいさくん

ただし、事前に情報を知らないと突然災害情報が入ってパニックになるケースもある。特に福祉サービスを受けている方なんかはその傾向が強いみたいだよ。

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