近年では家を建てる際に、太陽光発電を採用する人が増えています。
太陽の光は無限の資源であり、それを電気に変えることで電気代や資源を節約でき、地球温暖化の原因となるCO2を削減するため、現在多くの家庭で取り入れられています。
以前に比べ、太陽光発電の設置費用もソーラーパネルも格段に安くなり、また発電した電気を電力会社に売る「売電」を行うことで、設置費用を賄うこともできます。そのため、太陽光発電導入のハードルも低くなってきています。
しかし、太陽光発電を取り入れたのちに災害で家が被災し、倒壊した場合、負債だけが残ってしまうために導入はしないほうがいいと考える場合もあります。また、地域や土地柄によっては取り入れてもあまり意味のない場合もあります。
災害によりライフラインが途絶えてしまった場合、太陽光発電で電気を供給できるということは大きなメリットのように思いますが、実際のところはどうなのでしょうか。
太陽光発電の災害時におけるメリットとデメリットについて、調べてみましょう。
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目次
そもそも太陽光発電システムとはどんなもの?

私知ってるよ。太陽の光で電気を作るんだよね?でも、システムってなんだろう。複雑な機械とか面倒な手続きとかたくさんありそうだね。
ご存じ太陽光発電とは太陽光エネルギーを電気に変えるものですが、その仕組みとはいったいどういうものなのでしょう。
太陽光発電の準備に必要な装置と役割
太陽光発電いくつかの部品が集まってできています。
まずは簡単にどのような部品が使われているのかを説明します。
太陽電池モジュール
こういうコンパクトなものもあります。
太陽の光をエネルギーに変換するためには、まず太陽の光を吸収するものが必要です。
それが太陽電池モジュールと呼ばれるもので、いわゆる「ソーラーパネル」「太陽電池」のことを指します。
接続箱
ソーラーパネルで発電した電気を集めます。
パワーコンディショナー
ソーラーパネルで発電した電気を家庭で使えるように変換します。
分電盤
家中に電気を送るためのシステムです。余剰に発電された電気は分電盤を介して電力会社に売電することができます。
売電・買電メーター
電力会社が売電・買電量を確認するためのメーターです。
これら一式の装置を家庭に設置することで太陽光発電ができます。
防災の視点からみる太陽光発電のメリット
太陽光発電は、太陽さえ出ていればいつでも発電ができます。
地震で電気が遮断された場合でも、家庭で発電ができるので、電化製品が使用できます。(ただし、非常電源から供給できる電力は1500Wまでです。一度にたくさんの家電を使うことはできません。)
また、蓄電池も併せて設置しておけば、台風や豪雨、豪雪などの日照時間が少ない状況でも、蓄電した電気を使ってある程度生活することができます。
大きな地震が発生しても太陽光発電システムが破損されていなければ、発電可能です。
また、太陽光発電の節電効果は、何も発電によるものだけではありません。
ソーラーパネルが屋根に直接当たる太陽の熱を受けることで、夏場は太陽の熱で部屋の温度が上がることを予防してくれます。
逆に冬場には、冷え込みの強い朝方や真夜中の放射冷却を抑制することで、冷え込みを緩和する効果があります。

災害で電気がストップして、できるだけ節電しないといけないときにすっごく寒いのはつらいよね・・・。でも、ソーラーパネルのこんな効果で部屋がほんの少しでも過ごしやすくなると、被災したときにはありがたいね。
太陽光発電は災害に強い?
屋外に設置してあるソーラーパネル、災害で壊れてしまうんじゃない?と思いませんか?
そもそも屋外に設置するという想定で作られているものですので、基本的には災害に耐久性のあるものになっています。
しかし、いくら耐久性があるとはいえ、ずっと野ざらし状態のソーラーパネルは特に、影響を受けるのではないでしょうか?
実際のところはどうなのか、調べてみました。
落雷
ソーラーパネルそのものは絶縁材料で作られているものなので、基本的に落雷の直撃を受けにくいものになっているそうです。
しかし、パワーコンディショナーは落雷の影響を受けやすく、すぐ近くで落雷した場合、落雷により発生した電圧が誘導電流を起こし、パワーコンディショナーが破損する可能性があります。
太陽光発電システムそのものはこう言った落雷の対策が取られているので、すべてが破損して全く使えない!ということはありません。
多少影響を受けることや、パワーコンディショナーは落雷の被害を受けやすいということは頭に入れておきましょう。
積雪
ソーラーパネルは強化ガラスでコートされており、また傾斜をつけて取り付けるため、雪が積もりにくいようになっています。
万が一積もっても、50cmほどの積雪になら耐えられます。また、日中であれば発電の際に熱が発生することで雪が自然に溶けますので問題はありません。
ひょう・あられ
ソーラーパネルは厚さ3mm以上の強化ガラスでコートされています。
強度は、高さ1メートルのところから重量227g、直径3.8cmの硬球を落としても破損しないように設計することがJIS規格で定められています。
ちなみにひょうは直径5mm以上、あられは直径5mm以下です。
つまり、ひょうやあられのような硬いものが降ってきた場合、その大きさによっては損傷の可能性があります。
台風
建築基準法により、高さ15mのところで風速60mの風に耐えられるように設計されています。
2018年9月末に発生した台風24号では、最大瞬間風速56.6m(鹿児島県与論島で観測)でした。
中心気圧950hpaというかなり勢力の強い台風でしたが、数字だけでみるとソーラーパネルはあの台風でも耐えられるということが分かります。
塩害
モジュールの配線や金属製の架台が錆びたり発火したりすることから、海岸から500m以内の重塩害エリアは基本的に太陽光発電システムを設置することができません。
しかし、近年では塩害対策が施された製品もあり、メーカーによっては塩害エリアでも設置可能な場合もあります。
地震
ソーラーパネルの重量は1平方メートルあたり約12kg(パナソニック製品)です。結構重たいので、家屋の耐震性には多少影響します。
しかし、瓦屋根の場合だと1平方メートルあたり約45kgです。瓦で屋根を覆うよりは軽いうえに設置の際に重さが分散されるので、それほど影響は大きくありません。
地震の際は屋根の倒壊さえなければ問題なく使えます。

ソーラーパネルは台風に強いんだ!衝撃を与えると強化ガラスと言えど壊れるみたいなので、定期的なチェックやメンテナンスが必要だね
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防災の視点からみる太陽光発電のデメリット
ライフラインが遮断されたときには大活躍する太陽光発電ですが、実は大きなデメリットもあります。
太陽光発電システムそのものの故障によるものや、災害の二次的被害などが挙げられます。
企業が広大な用地を使用して発電しているメガソーラーシステムでは特に甚大な被害が報告されています。
家屋が倒壊した場合の二次被害
地震による家屋の倒壊で、ソーラーパネルが破損することがあります。ところが、破損したソーラーパネルも、太陽光を受けたら発電します。不用意に触れると感電する恐れがあります。
また、パワーコンディショナーや接続箱からの漏電により、火災が発生することがあります。
倒壊した家屋に残っている場合や、ソーラーパネルが屋根とともにがれきとなって破損している場合は、ソーラーパネルをビニールシートや段ボールで覆い、太陽光を浴びせないようにします。
また、やむを得ずパネルやパワーコンディショナーなどにに触れる場合は、電気専用のゴム手袋を着用します。
配線の切断が必要になりますが、電気工事士の資格がないとできない作業となりますので、必ずメーカーのカスタマーセンターに連絡しましょう。
とにかく素人が安易に近づいたり触れたりしてはいけません。
メガソーラー被災の二次被害
メガソーラーとは、出力1000kW以上の大規模な太陽光発電所のことで、全国に約40か所存在します。
広い土地にたくさんのソーラーパネルが並んでいるのを見たことはありますか?それがメガソーラーと呼ばれるものです。
2018年7月の西日本豪雨では、長期に渡る多量の降雨により土砂崩れが多発しました。その中で12か所の太陽光発電所が被災しました。
土砂崩れによりたくさん並べられたソーラーパネルが地面ごとずり落ち、近隣住民にも被害が及びました。
先ほど述べたように、ソーラーパネルが破損したり、洪水により水没しても、太陽光が当たる限り発電を続けますので、火災や感電の危険があります。
家庭用に比べ非常に大きな電力が発生しますので、非常に危険です。
また、ソーラーパネルは土砂災害を受けるとストロンチウムやヒ素などの有害物質が流出する恐れがあります。
お住まいの地域に太陽光発電所がある場合は、位置をよく確認し、災害時には感電しないよう迅速に避難する必要があります。

太陽光発電は安全、と聞いていたけれど、災害のときには原子力発電と同じような危険性があるんだね。壊れたときはとにかく絶対に近づいちゃだめ!
まとめ
災害の状況によっては太陽光発電はメリットにもデメリットにもなり得えることがわかったかと思います。。
太陽光発電は、システムそのものの破損や家屋の倒壊がない限りは、災害時に非常電源として大活躍します。
資源は無限に降り注ぐ太陽の光です。
災害時にライフラインが遮断されても太陽さえ出ていれば電気が使えるため、避難生活でも灯りを確保できる、情報を発信・受信することができます。
また、避難生活によるストレスを軽減することもできます。
一方で、太陽光発電自体が破損してしまうことで甚大な被害をもたらすことが分かりました。
特に土砂災害は家屋のみならず太陽光発電所も被災すると、感電や火災のみならず有害物質が発生する恐れがあります。
今後はどんな大規模災害が発生するかもわかりません。
ソーラーパネルの設置には日常においてはメリットの大きいものではありますが、いざというときにどんなことが起きるか分かりません。
太陽光発電を導入している方は、このようなリスクについて理解したうえで、いざというときに絶縁素材の手袋や衣服を備えておく、絶対に近づかないよう家族、特に子どもにしっかり言い聞かせておく、太陽光発電メーカーの連絡先を把握しておくなどの対策をしておきましょう。
また、現在導入を検討している方は、今後発生する災害の予測や居住地の土地や地形、家の構造などを把握してよく検討しましょう。
そして、太陽光発電所の場所を確認しておき、災害時にはそこからなるべく離れた場所に避難しましょう。
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